
二十一世紀の荒地へ
酒井直樹+坪井秀人
装幀:近藤みどり
2025年6月15日発売
四六判 上製カバー装 452頁
定価:本体4,000円+税
ISBN 978-4-7531-0394-2
20世紀の〈荒地〉から、21世紀の〈荒地〉へ━━
2001年9月11日に起きた、アメリカ・NYでの世界貿易センタービル爆破の記憶が生々しい最中に開始された、T・S・エリオットの『荒地』/鮎川信夫らの「荒地」派詩人という2つの〈荒地〉をめぐる対話。
その後、9回にわたって続けられた『現代詩手帖』誌上での往復書簡のやりとりは、日本の近代化と国民語/国語の成立、植民地主義と戦争、戦後の冷戦体制とその崩壊、パックスアメリカーナの拡大とその終焉へと射程を広げ、21世紀の歴史を批判的に読み解く。
21世紀、最初の四半世紀において紡がれたこの対話は、20世紀の2つの〈荒地〉における問いを引き継ぐとともに、戦後の〈帝国〉の喪失のなかで、いかなる思想をたちあげうるのか、その可能性と限界に示唆を与える、ひとつの理論的達成である。
渡邊英理氏(『中上健次論』著者)を迎えての特別鼎談を終章として掲載。
目次
まえがき(酒井直樹)
序 章 複数の「戦後」へと働きかける思考へ―― 鮎川信夫の死と詩的言語
第一章 荒地を荒地として生きること
第二章 近代化の中の日本語
第三章 国民語を再考する
第四章 国民語と天皇制
第五章 多言語性と日本語の死産
第六章 文明論的転移と日本文化論
第七章 「関係的同一性」から「種的同一性」への移行
第八章 「種的同一性」と天皇制
第九章 国民国家と文学のシステム
終 章 「トランス」としての対話(酒井直樹・坪井秀人+渡邊英理)
あとがき(坪井秀人)
著者
酒井 直樹 (サカイ ナオキ)
シカゴ大学およびコーネル大学でアジア学・比較文学・歴史学の教鞭をとる。現在、コーネル大学名誉教授。比較文学、思想史、翻訳研究、人種主義やナショナリズムについて研究し、その著作は様々な言語で出版されている。韓国語、中国語、英語、日本語の四つの言語による雑誌『TRACES』を主導したほか、世界各地のジャーナルの編集委員を務める。日本語で刊行された主著に『過去の声――18 世紀日本の言説における言語の地位』(以文社、2002年)、『死産される日本語・日本人――「日本」の歴史–地政的配置』(新曜社、1996年/講談社学術文庫、2015年)、『日本思想という問題――翻訳と主体』(岩 波書店、1997年/岩波モダンクラシックス、2007年) 、『ひきこもりの国民主義』(岩波書店、2017年)などがある。
坪井 秀人 (ツボイ ヒデト)
早稲田大学文学学術院教授。名古屋大学・国際日本文化研究センター名誉教授。主著に『声の祝祭――日本近代詩と戦争』(名古屋大学出版会、1997)、『戦争の記憶をさかのぼる』(筑摩書房、2005年)、『感覚の近代――声・身体・表象』(名古屋大学出版会、2006年)、『性が語る―― 20世紀日本文学の性と身体』(名古屋大学出版会、2012年)、『二十世紀日本語詩を思い出す』(思潮社、2020年)、『戦後表現―Japanese Literature after1945―』(名古屋大学出版会、2023年)、編著に『戦後日本を読みかえる』全6巻(臨川書店、2018-19年)、『戦後日本文化再考』(三人社、2019年)、『戦後日本の傷跡』(臨川書店、2022年)などがある。