経済の未来──世界をその幻惑から解くために

ジャン=ピエール・デュピュイ(森元庸介 訳)

装幀:難波園子
装画:宇佐美圭司(ホリゾント・黙字 8つのフォーカス2 1994-95)
2018年10月18日発売
四六判 上製カバー装 216頁
定価:本体2,700円+税
ISBN 978-4-7531-0347-8​

2000年代以降、「カタストロフ」の概念をめぐる諸著作(『ツナミの小形而上学』、『チェルノブイリ』他)によって注目を集めた、ジャン=ピエール・デュピュイの金融危機=経済への考察を中心にした最新作。
本書は、2008年以降の金融危機を対象として、それが、経済合理性という神話に基づいたパラドキシカルなメカニズムであり、その結果、現代のグローバル化した世界では政治(社会保障、外交、軍事などあらゆる政策)が経済の関数に成り下がっていることに警鐘を鳴らす。


目次

序 政治を手玉に取る経済

第1章 経済と悪という問題
1 悪という問題
2 経済の暴力
3 経済はわたしたちをわたしたち自身の暴力から護る
4 経済と聖なるもの
5 経済の自己超越とパニック
6 経済に汚染される倫理

第2章 自己超越
1 価格の自己超越
2 自己超越としての未来
3 金融パニック下の公的発話
4 破局期におけるコミュニケーション
5 言葉を介さぬ自己超越
6 拷問のふたつの形
7 政治の自己超越

第3章 終わりの経済学と経済の終わり
1 わたしたちに残された時間
2 経済と死
3 統計的な死をめぐる経済学と反実的な死
4 待機 自己の死と金融バブルの崩壊
5 アポカリプスの経済学

第4章 経済理性批判
1 カルヴァン主義的選択の不合理と資本主義のダイナミクス
2 自己の予定を選ぶこと
3 自己背信の信とカルヴァン主義的な選択
4 個人主義、この嘘

結び 運命論を脱けて
補遺 時間、パラドクス


著者

ジャン=ピエール・デュピュイ(Jean-Pierre Dupuy)
1941年生まれ。哲学者。理工科学校名誉教授(社会哲学、政治哲学)。スタンフォード大学教授(哲学・文学、政治科学)。フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)倫理委員会委員長、イミタチオ財団研究主任。
主な著書
『秩序と無秩序――新しいパラダイムの探求』(法政大学出版局、1987年)
『犠牲と羨望――自由主義社会における正義の問題』(法政大学出版局、2003年).
『ツナミの小形而上学』(岩波書店、2011年)
『チェルノブイリある科学哲学者の怒り――現代の「悪」とカタストロフィー』(明石書店、
2012年)
『ありえないことが現実になるとき――賢明な破局論にむけて』(筑摩書房、2012年)など多数。

訳者

森元 庸介(もりもと ようすけ)
1976年、大阪府生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。パリ西大学博士(人文学)。現在、東京大学大学院総合文化研究科准教授。共著に『カタストロフからの哲学』以文社、2015年ほか。訳書に、ジョルジュ・ディディ=ユベルマン『ニンファ・モデルナ』平凡社、2013年、ジャン=ピエール・デュピュイ『聖なるものの刻印』(共訳)以文社、2014年など多数。