死にゆく都市、回帰する巷

装幀:川邉雄
カバー・ダイアグラム:co-op/t
2010年6月21日発売
四六判 並製カバー装 208頁
定価:本体1,900円+税
ISBN 978-4-7531-0279-2​

死にゆく都市、回帰する巷──ニューヨークとその彼方

高祖岩三郎

今まさに世界は大変動期に入った

ジェントリフィケーションの過剰により、いまや都市のモデルとしての役目を終えつつあるニューヨーク。その周縁部で「世界民衆」が興そうとする「巷としての都市」の萌芽を掴む。00年代末、激動期のアメリカにおいて、『ニューヨーク烈伝』『流体都市を構築せよ!』で比類なき都市論を物した著者は何を見、考えたのか? 希望を未来へと解き放つ初のエッセイ集。


目次

はじめに――ニューヨークとその彼方
2006
1. 都市の言葉(ロゴス)について
2. 都市空間と芸術(アート)
3. 都市の中の詩――あるいは「前夜の詩人たち」
4. 歩行都市、自動車都市、自転車都市
5. 移民国家(アメリカ)の虚偽
6. アート・情動労働・アクティヴィズム
7. 大阪からニューヨークへ――幻のメガロポリス
8. 世界の鼓動を聴く――プロスペクト・パークのドラム集団(サークル)
9. ニューヨークの英語――地の果ての言語
10. 未来主義の廃墟から
11. 再建SDSについて
12. オアハカ市とニューヨーク市を繋ぐもの

2007
13. 甦る9・11直後の光景
14. 歴史的宿命に抗して――あるいはピンチョンのAgainst the Day
15. 権力もまた夢を視る――あるいはロバート・モーゼス再評価について
16. 知性と文化の脱ジェントリフィケーション
17. 進歩的な「夢想の政治」は可能か?――スティーブン・ダンコムのDreamについて
18. 地球的正義の系譜――アブラハム・リンカーン旅団再訪
19. 恐怖による政治
20. セントラルパークという装置
21. ハドソン河のグローバルな詩
22. ニューヨーク以後の都市モデル
23. 理論と政治の限界について――直接行動礼賛
24. 馬鹿者どもの壁

2008
25. ふたつのアメリカの闘争
26. CNN、FOX――テレビによる単一国民形成
27. 不動産アートの出現
28. ポートランドからニューヨークを見る、あるいは都市のエコロジー
29. 大統領選挙の悪夢
30. 回帰し続ける警察の暴挙――ショーン・ベル事件とその後
31. 地球的密集、共棲、そして相互扶助
32. ブルックリンにおける2008年反G8運動報告会
33. 二つの国民選挙
34. 垣間みえる新しい時代
35. アメリカ郊外の哀しみ
36. 火の河をわたれ!

2009
37. ニュースクール造反有利
38. 諸価値の価値転換
39. われわれはただの生を肯定しえるか?
40. 回帰するメルヴィル
41. いま政治の穴から垣間見えるもの
42. 複数のアメリカ合衆国国歌(アンセム)

おわりに――批判的範疇(カテゴリー)としての都市


著者

高祖 岩三郎(こうそ いわさぶろう)
ニューヨーク在住。翻訳家、批評家。Autonomedia編集員、VOLコレクティヴのメンバー。1980年渡米後、画商、グラフィック・デザイナー、翻訳業を勤める。
著書に『ニューヨーク烈伝――闘う民衆の都市空間』(青土社、2006年)、『流体都市を構築せよ!――世界民衆都市ニューヨークの形成』(同、2007年)、『新しいアナキズムの系譜学』(河出書房新社、2009年)。
訳書にArchitecture As Metaphor (Kojin Karatani, MIT Press, 1995), Transcritique (Kojin Karatani, 同, 2003)など。